悪性腫瘍内に出現する、炎症細胞(主に単球由来細胞)の機能解析と腫瘍細胞への影響。
【研究内容】
卵巣癌は、多くが初回治療時に高頻度に腹膜播種を認め進行期であり婦人科腫瘍の中でも最も予後が不良な疾患である。以前我々のグループは、腹膜播種形成能を認めないヒト卵巣漿液性腺癌から樹立した細胞株(以下FOC-3)から高頻度に腹膜播種能を有する細胞株(以下MFOC-3)を樹立した。この2つの細胞株間において癌関連遺伝子をマイクロアレイ法にて調べたところ、MFOC-3はFOC-3に比べEpidermal growth factor(EGF)familyの一つであるNeuregulin(Heregulin)が7.8倍と著明に発現が亢進しており、それらの受容体の一つであるHER-2の過剰発現は、乳癌・卵巣癌の約1/3に認められ卵巣癌進行症例の予後不良との関連も示唆されている。上記の2つの細胞株増殖能においてはMFOC-3が、有意に増殖能が亢進しており、外因性HRG1-αに対する反応性もMFOC-3では亢進していた。さらにHER-2,HER-3,HER-4の受容体蛋白発現もMFOC-3においては亢進しており腹膜播種形成の一因においても細胞増殖も関与していることが判明した。現在までのところ、In vitroにおいて抗HER-2抗体を加えることでMFOC-3の増殖能が抑制される所までは分かっており今後マウス腹腔内の腫瘍形成抑制についても検討していく予定である。
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