産科婦人科学講座は、福島女子医専が創立された昭和19年に産婦人科医長となられた柴生田鉄策先生が昭和20年4月より初代教授となり、始まりました。その後、昭和21年8月から第2代目九嶋勝司教授、昭和33年3月から第3代目鈴木泰三教授、同年4月から第4代目貴家寛而教授、昭和46年4月から第5代目福島務教授、昭和60年9月より第6代目佐藤章教授、そして平成21年8月より、私、藤森敬也が第7代目の教授を担当させていただいております。
本教室では、これまですべての産科婦人科領域おいて優秀な医師を多数輩出し、また、沢山の優れた研究を国内外に発表し報告して参りました。しかしながら、現在、全国的な産婦人科医不足が問題となっており、当教室もその例外ではなく、とかく研究面が疎かになりがちでありますが、そこは再度引き締めて、若い医局員が増えてくることを期待しつつ、臨床・教育・研究に頑張って参りたいと考えております。
現在の主な臨床診療内容と研究内容をご紹介し、教室の紹介とさせていただきます。
現在の附属病院における臨床診療
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当教室の特徴は、私を含めた全教室員が産科学・婦人科学を学び、そして産科・婦人科の分け隔てなく臨床診療を行っているということであります。
周産期医学 |
総合周産期母子医療センターにおける母子管理に重点をおき、胎児超音波による出生前診断、胎児well-being の評価、早産防止、重症合併症妊婦の全身管理を主体に、関連機関と協力関係を保ちながら行っています。新生児の予後に与える影響は出生前からの胎児管理が重要であり、積極的なintervention(羊水あるいは臍帯穿刺による遺伝学的、生化学的評価)が行われています。また、胎児輸血や胎児胸腔・膀胱-羊水腔シャント術といった胎児治療も行っています。
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不妊症治療 |
難治性の男性不妊を最も得意とし、顕微授精はもちろんのこと、体外受精-胚移植、胚盤胞培養などの治療に対応しています。さらに泌尿器科との連携により、無精子症症例精巣からの精子回収により顕微授精を行っております。
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婦人科腫瘍治療 |
子宮頸癌、体癌、卵巣癌、絨毛性疾患の治療を中心に診療を行っています。手術療法では臨床進行期、組織型により旁大動脈リンパ節郭清まで実施しています。婦人科腫瘍では多臓器と比較し化学療法の奏功率が良好であり、neo-adjuvant chemotherapy(NAC)の併用、タキサン系・白金錯化合物を中心とした卵巣癌術後化学療法、子宮頸癌に対するchemoradiation、動注療法などを行っています。その他、開腹をしないで子宮筋腫を縮小温存する子宮動脈塞栓術(uterine artery embolization:UAE)も放射線科講座との連携および国内研修により技術修得された医局員により行われています。
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内視鏡治療 |
教室員全員が内視鏡治療を行うことが出来ます。
卵巣および子宮の良性腫瘍、子宮外妊娠に対して腹腔鏡下あるいは子宮鏡下に手術を行っています。
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更年期・骨粗鬆症 |
毎週木曜日に専門医が検査・治療にあたっています。骨塩量測定、ホルモン補充療法などを行っております。
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主な研究内容
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産婦人科領域においては、婦人科腫瘍学、周産期学、生殖内分泌学とに分かれて研究が行われています。婦人科腫瘍学領域では、卵巣癌における癌性腹膜炎の発生機序や子宮体癌の浸潤に関するマクロファージの研究等、婦人科癌の播種・転移の研究が主に行われています。周産期学領域では、妊娠羊やヤギを用いた胎児循環・内分泌・行動学の研究が盛んに行われ、たくさんの医局員が”ひつじ”で学位を授与されています。また、子宮筋を用いた薬理学的研究や、生活習慣病における胎内プログラミングの研究、母子間の輸血現象による胎児マイクロキメリズムの研究などが行われています。生殖内分泌学領域では、男性不妊を中心とした難治性受精障害の研究には歴史があり、1994年には本邦初の顕微授精(Intracytoplasmic sperm injection: ICSI)による生児誕生が当教室から報告されています。また、多のう胞性卵巣や薬剤の子宮内膜症におけるsteroid receptorへの影響の研究などが行われています。
最後に、産婦人科医療の”復活”のためには、医局から優秀な産婦人科医をたくさん輩出することだと思っています。そのためには、魅力的な学生教育を行い、一人でも多くの医学生、研修医の方々に産婦人科を専攻していただくことが、遅いようで実は近道なのではないかと思っています。専門医教育においては、産科学、婦人科腫瘍学、内分泌学のすべての分野においてバランスの取れたgeneralistを育成するとともに、周産期学、婦人科腫瘍学、不妊・内分泌学、内視鏡治療、臨床遺伝学、臨床細胞診断学、超音波診断学など多岐にわたるspecialistを育成して参りたいと考えています。 未だ、当教室をはじめ福島県内の産婦人科医が不足しており、各病院・諸先生方には多々ご迷惑をおかけしておりますが、福島県の産婦人科医療に貢献できるよう努力いたしますので、今後とも皆様のご支援・ご指導を賜りますようお願い申し上げます。
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