ヒトゲノムをはじめさまざまな生物種のゲノム解析結果が報告さている現在、生命科学はポストゲノムといわれる次の段階に入っています。ポストゲノム領域は1)ゲノムレベルの全遺伝子、2)それらの遺伝子が最初に細胞内で発現する形態であるmRNAの総体(トランスクリプトーム)、3)2)によって生産されるタンパク質の総体(プロテオーム)の研究解明であり、現在これらの研究におおきな力がそそがれています。
(図1 メタボローム解析の位置づけ)
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細胞活動の維持に必要な物質と化学エネルギーは代謝により生産され、細胞機能を解明するには、酵素タンパク質が生産する総代謝物質(メタボローム)を網羅的に測定し、酵素活性等との関係を明確にする必要があります。そのためメタボローム解析を行うことは代謝メカニズムの解明に役立つことが期待されていますが、その他、疾病診断や予後予測、治療効果などを推定する各種のバイオマーカーの発見、新規代謝経路の探索への期待がよせられています。
福島医大産婦人科学講座ではメタボローム解析により、非妊娠女性と正常妊娠女性での代謝特性の相違を明らかにしてきました。また、分娩期のPIH群と正常妊娠群での母体血、臍帯血、胎盤を用いて代謝特性の相違を検討し、新たなバイオマーカー発見の可能性を示唆してきました。しかしこれらはすべて、横断的なに基づくものであります。今回の追加調査で、PIHにおける代謝特性の継時的変化は明らかになれば、新規バイオマーカーの発見、病態解明、新規治療方法の開発に貢献するかもしれません。
(図2 PIH群と正常群における代謝マップの1例) |